
60歳になったら年金の支払いは終わる?意外と知らない年金の仕組み
「60歳になったら年金保険料は払わなくていいの?」と思っている人は要注意。実は、年金の支払いが終わる人もいれば、60歳以降も払い続ける必要がある人もいます。自分の年金がどうなるのか、正しく理解していますか?
国民年金は原則60歳で支払いが終了しますが、未納期間があると任意加入が可能です。一方、厚生年金は70歳未満の会社員に加入義務があり、60歳を過ぎても働いている限り保険料を支払う必要があります。また、年金の受給開始時期を繰上げたり繰下げたりすることで、受給額を調整することも可能です。
知らずに損をしたり、後悔しないためにも、年金の仕組みを正しく理解し、適切な選択をすることが大切です。
●この記事を読んでほしい人
- 60歳で年金保険料の支払いが本当に終わるのか不安な人
- 60歳以降の年金の受け取り方について知りたい人
- 年金保険料の免除や猶予制度について詳しく知りたい人
●この記事を読むメリット
- 60歳以降の年金保険料の支払いが必要かどうかが分かる
- 厚生年金と国民年金の違いを理解できる
- 年金を受け取るタイミングによるメリット・デメリットを学べる
- 免除や猶予制度を活用する方法が分かる
- 60歳以降の年金に関する正しい知識を得られる
将来の安心のために、年金の仕組みをしっかり理解し、賢い選択をしましょう。
60歳になったら年金保険料は払わなくていいの?

60歳で年金保険料の支払いは終わる?
60歳になったら年金保険料の支払いは終わるのか、気になるところですよね。結論から言うと、支払いが終わる場合もあれば、引き続き支払うケースもあります。これは「どの年金に加入しているか」によって変わるからです。
国民年金は原則60歳まで
まず、日本の公的年金は「国民年金」と「厚生年金」の2つに分かれています。このうち、国民年金(自営業やフリーランスの方が加入する年金)は、原則60歳までの支払いと決まっています。つまり、60歳を迎えたら自動的に保険料の納付はストップします。
ただし、満額の老齢基礎年金を受け取るために必要な納付期間(原則40年)を満たしていない場合は、任意で加入を延長することもできます。これについては後ほど詳しく解説します。
厚生年金は60歳以降も続く?
一方、会社員や公務員が加入する厚生年金は、60歳を過ぎても働き続ける限り、原則として保険料を支払い続けることになります。実は厚生年金の加入義務は「70歳未満の会社員」に適用されるため、60歳を超えて働いている人は年金を払い続けることになるのです。
たとえば、60歳以降も正社員として勤務している場合は、そのまま厚生年金の保険料を給与から天引きされる形になります。パートやアルバイトでも、労働時間や勤務日数が一定の条件を満たしていると、厚生年金の加入義務が発生します。
60歳で完全に年金保険料の支払いが終わる人もいる
以上のことから、「60歳で年金保険料の支払いが終わるかどうか」は、その人の働き方や加入している年金制度によって違うということですね。
- 自営業・フリーランスの人(国民年金) → 原則60歳で支払い終了
- 会社員・公務員(厚生年金) → 60歳以降も働けば支払いが続く
- 過去に未納期間がある人 → 60歳以降も任意加入で支払える
「自分はどのケースに当てはまるのか?」をまずは確認してみましょう!
まだ年金保険料を払っている人がいる理由
60歳を過ぎても年金保険料を払い続けている人がいるのは、不思議に思うかもしれません。でも、実は年金制度の仕組みを知ると「なるほど、そういうことか!」と納得できる理由がいくつかあります。
厚生年金は70歳まで加入義務がある
会社員や公務員が加入する厚生年金は、60歳を超えても働いている限り、基本的に加入し続けることになります。 厚生年金の加入義務は「70歳未満の会社員」が対象なので、60歳以降も働いている人は引き続き保険料を支払う必要があります。
例えば、60歳で定年を迎えても、そのまま再雇用で働き続ける人や、別の会社に再就職する人は多いですよね。その場合、勤務時間や収入の条件を満たせば、自動的に厚生年金の加入対象となるので、70歳になるまで保険料を支払うことになるのです。
国民年金の「任意加入制度」を利用している
国民年金は原則60歳までの支払いですが、「任意加入制度」を利用して60歳以降も年金保険料を払い続ける人もいます。 これは、過去に年金保険料を未納や免除していた期間があり、受給資格を満たしていなかったり、満額の年金を受け取るために加入期間を延ばしたい人が利用する制度です。
特に、老齢基礎年金を満額(40年分)受け取るためには、しっかり納付している必要があります。60歳の時点で納付期間が足りない場合、「あと少し払えば受給額が増える!」と考えて、任意加入する人もいるのです。
また、特例として昭和40年4月1日以前に生まれた人は、最大70歳まで任意加入が可能です。これに該当する人は、60歳以降も年金保険料を払い続けることがあります。
受給額を増やすために「付加年金」を払っている
自営業やフリーランスの人が加入する国民年金には、「付加年金」というオプションがあります。これは、毎月400円を追加で支払うことで、将来の年金額を増やす制度です。
付加年金は「支払った額の2年分で元が取れる」というお得な仕組みになっているため、「60歳以降も少しでも多く年金を受け取りたい」と考える人が加入しているケースもあります。
まとめると…
60歳を過ぎても年金保険料を払い続けている人には、主に以下のような理由があります。
- 厚生年金に加入している(70歳まで義務)
- 国民年金の任意加入で支払いを続けている
- 受給資格を満たすために支払っている
- 付加年金を払って将来の受給額を増やそうとしている
「60歳で年金の支払いは終わる」と思っていた人にとっては、意外に感じるかもしれませんね。でも、将来の年金額を増やしたり、資格を満たすためにあえて支払う人も多いのです。
60歳以降の年金保険料支払い義務

国民年金保険料は60歳までの支払いが基本
国民年金保険料は、原則として20歳から60歳まで支払うことが義務付けられています。これは自営業やフリーランスの人、会社員を退職して国民年金に切り替えた人などが対象で、60歳になると基本的に支払い義務はなくなります。
ただし、状況によっては60歳以降も支払うケースがあるため、「本当に支払いが終わるのか?」を確認することが大切です。
60歳になったら自動的に支払いが終わる?
60歳を迎えたら、国民年金の保険料の支払いは原則として終了します。しかし、誕生日を迎えた瞬間にストップするわけではなく、誕生日の前月までの保険料を支払う必要があります。
例えば、4月生まれの人は3月分まで納付する必要があります。「60歳になったからもう払わなくていい」と勘違いして未納扱いにならないよう注意しましょう。
60歳以降も支払いを続けるケース
60歳で支払いが終わるのは基本ですが、実は「任意加入制度」を利用して60歳以降も支払いを続ける人もいます。
この制度を利用する主な理由は以下の2つです。
- 年金の受給資格(最低10年の加入)を満たしていない場合
- 満額の年金を受け取るために納付期間を延ばしたい場合
特に、過去に未納期間がある人は、60歳以降も支払うことで将来受け取れる年金額を増やすことができます。
70歳まで支払いが続く人もいる
昭和40年4月1日以前に生まれた人は、特例として70歳まで任意加入が可能です。そのため、60歳で支払いが終わらず、さらに長く支払い続ける人もいます。
また、会社員などで厚生年金に加入している場合は、60歳以降も働いている限り厚生年金の保険料を支払う必要があります。
60歳で本当に支払いが終わるのか確認を!
「60歳になったら自動的に支払いが終わる」と思っていると、知らないうちに未納になってしまったり、将来の年金額が減ってしまう可能性があります。自分の年金保険料の納付状況をしっかり確認し、必要に応じて適切な選択をしましょう。
会社員は60歳以降も厚生年金保険料を支払う?
会社員として働いている場合、60歳を過ぎても厚生年金保険料の支払い義務が続くことがあります。厚生年金の加入義務は70歳未満の会社員に適用されるため、60歳以降も勤務を続けると保険料の支払いが続くことになります。では、具体的にどのようなケースで支払いが必要になるのか見ていきましょう。
60歳以降も働けば厚生年金保険料の支払いが続く
厚生年金は、企業で働く会社員や公務員が加入する年金制度です。通常、60歳で定年を迎える企業が多いですが、その後も再雇用や再就職をして厚生年金の適用条件を満たす場合は、70歳になるまで加入義務があります。
たとえば、60歳以降に以下のような働き方をしている場合、厚生年金保険料の支払いが続きます。
- 同じ会社で再雇用される(定年後に再雇用制度を利用)
- 新しい会社に転職して働く(正社員・契約社員として勤務)
- パート・アルバイトでも一定の条件を満たす場合
パートやアルバイトでも厚生年金に加入することがある
60歳以降、パートやアルバイトに切り替えた場合でも、労働条件によっては厚生年金に加入する必要があります。
具体的には、以下の条件を満たすと厚生年金の加入対象になります。
- 週の労働時間が20時間以上
- 月額賃金が8.8万円以上
- 2カ月以上の雇用見込みがある
- 従業員101人以上の企業(2024年10月以降は51人以上)
「60歳になったから厚生年金保険料の支払いは終わり」と思っていても、再雇用やパート・アルバイトの働き方次第では、引き続き保険料を納めることになるので注意しましょう。
70歳になると厚生年金保険料の支払いは終了
厚生年金保険料の支払いは、原則として70歳になると終了します。つまり、60歳を超えて働いていても、70歳に到達すると自動的に厚生年金の加入資格を失い、それ以降の保険料の支払いは不要になります。
ただし、70歳以降も年金を増やしたい場合、国民年金の「任意加入制度」を利用することができます。これは、厚生年金の加入資格を失った後でも、自分の希望で年金を支払って受給額を増やす仕組みです。
60歳以降も働くなら厚生年金の仕組みを知っておこう
60歳を迎えたからといって、厚生年金の支払いが自動的に終わるわけではありません。再雇用やパート勤務など働き方によっては引き続き支払い義務があるため、「どのタイミングで支払いが終わるのか」をしっかり確認することが大切です。
年金保険料未納のリスクとは
年金保険料の支払いが負担に感じることもありますが、未納のまま放置すると大きなリスクを伴います。「払わなくてもなんとかなる」と思っていると、将来的に損をしてしまう可能性があるので注意しましょう。
受給資格を満たせず年金がもらえない
年金を受け取るためには、最低10年(120か月)以上の保険料納付が必要です。もし未納期間が長くなり、この受給資格を満たせなかった場合、老後に年金を受け取ることができなくなります。
老後の生活資金は、公的年金に大きく依存する人が多いため、「年金がない=収入がない」状態になりやすく、経済的に厳しくなる可能性が高いです。特に、貯蓄が少ない人は、年金保険料未納が老後の大きなリスクになるでしょう。
もらえる年金額が減ってしまう
年金の金額は、納付した期間によって決まります。未納期間があると、当然ながら受給額が減少し、想定よりも少ない年金しかもらえないことになります。
例えば、国民年金の老齢基礎年金は40年間(480か月)しっかり納めていれば満額を受給できますが、未納期間が多いとその分だけ減額されます。
「あと少し払えば受給額が増える」というケースも多いので、未納のまま放置せず、追納や任意加入を検討することが重要です。
障害年金や遺族年金が受け取れない可能性がある
年金には、老後にもらう「老齢年金」だけでなく、「障害年金」や「遺族年金」といった保障の側面もあります。
例えば、万が一の事故や病気で障害を負った場合、障害年金を受け取ることができます。しかし、過去に未納期間が多いと、この障害年金の受給資格を満たせず、生活に困ってしまう可能性があります。
また、遺族年金は、年金保険料を支払っていた人が亡くなった際に、遺族(配偶者や子供など)に支給される年金ですが、未納が多いと支給対象外になることもあります。家族の生活を守るためにも、未納はできるだけ避けることが望ましいでしょう。
未納期間が長いと追納ができなくなる
未納になった場合、過去2年分までは後から「追納」することができます。しかし、それ以上前の期間は基本的に追納できません。
つまり、「年金が少ないから過去の未納分を払って増やしたい」と思っても、すでに時効になっていると支払うことができず、年金額を増やす手段がなくなってしまうのです。
2年以内であれば追納が可能なので、未納期間がある場合は早めに確認し、必要に応じて追納を検討することが大切です。
未納によるリスクを軽減するために
年金未納には「受給資格を失う」「もらえる年金が減る」「障害年金や遺族年金が受け取れない」などのリスクがあります。もし支払いが厳しい場合は、免除や猶予の制度を活用するのも一つの方法です。未納のまま放置せず、自分に合った対策を考えることが重要です。
60歳以降も年金保険料を払うケース

任意加入制度とは?
任意加入制度とは、本来60歳で終了する国民年金の保険料支払いを、自分の意思で延長して支払うことができる制度です。特に、将来受け取る年金額を増やしたい人や、受給資格を満たしていない人にとっては重要な制度になります。
なぜ任意加入制度があるの?
国民年金の支払い期間は原則60歳までですが、満額の老齢基礎年金を受け取るためには、40年間(480か月)の納付が必要です。
しかし、過去に未納期間があった場合、60歳時点で支払期間が足りず、受給額が減ってしまうことがあります。そこで、足りない分を追加で支払えるようにするのが「任意加入制度」です。
どんな人が利用できる?
任意加入できるのは、主に以下のような人です。
- 60歳時点で年金保険料の納付期間が40年に満たない人(満額受給を目指したい)
- 年金受給資格(最低10年の納付)をまだ満たしていない人
- 受給額を少しでも増やしたい人
例えば、国民年金保険料の未納期間がある人が「あと2年分支払えば満額に近づく!」といった場合、任意加入を選択することで将来の受給額を増やせます。
任意加入できる期間は?
任意加入できるのは60歳から65歳までです。ただし、以下の条件に当てはまる人は70歳まで加入を延長できます。
- 昭和40年4月1日以前生まれの人(特例高齢任意加入)
- 受給資格の10年(120か月)をまだ満たしていない人
この特例を利用すれば、より長く支払って年金の受給額を増やすことが可能です。
どこで手続きできる?
任意加入を希望する場合は、住んでいる地域の年金事務所または市区町村役場で申請できます。必要な書類は以下の通りです。
- 基礎年金番号が分かる書類(年金手帳やねんきん定期便など)
- 本人確認書類(マイナンバーカードや運転免許証など)
- 預(貯)金通帳と金融機関の届出印(口座振替を希望する場合)
手続きが完了すると、国民年金保険料を60歳以降も継続して納付する形になります。
任意加入するとどうなる?
任意加入をすると、将来の年金額を増やせるだけでなく、万が一のときの障害年金や遺族年金の保障を受けることができるメリットもあります。ただし、支払う保険料が増えるため、自分にとって本当に必要かどうかをよく考えて判断することが大切です。
加入しないと損することがある?
年金保険料の支払いは負担に感じることもありますが、60歳以降に任意加入しないと損をしてしまうケースもあります。特に、将来の年金額や受給資格に影響を与える可能性があるため、自分の状況をよく確認することが大切です。
任意加入しないと年金の受給額が減る
国民年金は、40年間(480か月)満額納付すると、満額の老齢基礎年金を受け取ることができます。しかし、未納期間があると、その分だけ年金額が減ってしまいます。
例えば、2024年度の老齢基礎年金の満額は年間約81万6,000円ですが、納付期間が35年(420か月)の場合、単純計算で約10万円近く年金額が減ることになります。これは老後の生活資金に大きな影響を与える可能性があります。
受給資格を満たせず年金がもらえないケースも
年金を受け取るためには、最低10年間(120か月)の納付が必要です。60歳時点でこの受給資格を満たしていない場合、任意加入しなければ年金を受け取ることすらできません。
例えば、過去にフリーランスや自営業で未納期間が長かった人が、60歳時点で納付期間が8年(96か月)しかなかった場合、そのままだと老齢基礎年金を受け取る資格がありません。しかし、あと2年間(24か月)任意加入することで受給資格を満たせば、将来の年金を受け取れるようになります。
加入しないと将来的に後悔する可能性も
年金は、一度減額されると基本的に一生その金額が続くため、未納期間による減額は老後の長期的な生活に影響を与えます。「もう少し払っておけばよかった…」と後から後悔しても、任意加入できる期間を過ぎてしまうと取り返しがつきません。
また、任意加入せずに年金の受給資格を満たせないと、老後の生活資金を他の方法で確保する必要があります。貯蓄が十分にある場合は問題ありませんが、年金を受け取れないと生活が厳しくなる可能性もあるため、慎重に判断することが大切です。
加入しないと損をする人はどんな人?
以下のような人は、任意加入しないと損をする可能性が高いので要注意です。
- 過去に未納期間があり、満額受給に届いていない人
- 年金の受給資格(10年)が足りていない人
- 老後の生活費を年金に頼る予定の人
- 少しでも多く年金を受け取りたい人
60歳を迎える前に、自分の年金保険料の納付状況を確認し、「このままで問題ないのか?」「任意加入したほうが将来的に得なのか?」をしっかり考えてみることをおすすめします。
厚生年金は70歳まで支払い義務あり
厚生年金に加入している会社員や公務員は、原則として70歳まで厚生年金の支払い義務があります。 つまり、60歳を過ぎても会社で働き続ける場合、年金保険料の支払いが続くことになるのです。では、具体的にどのようなケースで70歳まで支払い義務が発生するのか見ていきましょう。
60歳以降も厚生年金を払う理由
厚生年金は、国民年金と異なり、60歳になったからといって自動的に支払いが終わるわけではありません。 厚生年金に加入できる条件を満たす限り、70歳になるまで保険料を納める必要があります。
例えば、以下のような働き方をしている場合、60歳以降も厚生年金保険料の支払いが続きます。
- 定年後に再雇用で引き続き同じ会社で働く
- 60歳以降に転職して新しい会社で勤務する
- パート・アルバイトでも厚生年金の適用条件を満たす
会社員として勤務している限り、年齢に関係なく厚生年金保険料が給与から天引きされる仕組みになっています。
パートやアルバイトでも加入義務がある?
60歳以降にフルタイム勤務をやめて、パートやアルバイトになった場合でも、一定の条件を満たせば厚生年金に加入し続けることになります。
具体的には、以下の条件をすべて満たすと、60歳以降でも厚生年金の加入対象となります。
- 週の労働時間が20時間以上
- 月額賃金が8.8万円以上
- 2カ月以上の雇用見込みがある
- 会社の従業員数が101人以上(2024年10月以降は51人以上)
この条件に当てはまると、パート・アルバイトでも厚生年金に加入し、70歳まで支払いが続くことになります。
70歳になると厚生年金の加入義務は終了
厚生年金は、70歳になると自動的に加入資格を失い、それ以降は保険料の支払いが不要になります。つまり、働いていても70歳以降は厚生年金保険料を納める必要がなくなるということです。
ただし、70歳以降も働いている場合は、厚生年金ではなく健康保険料のみ給与から引かれる形になります。 つまり、社会保険の負担は減るものの、引き続き健康保険料はかかることを覚えておきましょう。
60歳以降も厚生年金を払うメリット
「60歳以降も厚生年金を支払うのは損では?」と思うかもしれませんが、実はメリットもあります。
- 将来受け取る厚生年金の金額が増える
- 厚生年金に20年以上加入していると「加給年金」がもらえる
- 60歳以降の収入が増えれば、老後の生活資金に余裕ができる
特に、厚生年金の加入期間が20年以上になると「加給年金」という年金に上乗せされる給付を受けられる可能性があります。そのため、長く働くことで年金の受給額を増やせるのは大きなメリットです。
70歳まで働くかどうかで支払い額が変わる
60歳で定年を迎えた後も、どのような働き方を選ぶかによって、厚生年金保険料の支払いが続くかどうかが決まります。 再雇用や転職をする予定がある人は、「厚生年金保険料を払い続けることで、将来の年金額がどう変わるのか」を考えながら働き方を選ぶことが大切です。
年金の免除・猶予制度

経済的理由で支払いが厳しい場合
年金の保険料を支払いたくても、収入が減ったり、経済的な事情で支払いが難しくなることもありますよね。そんなときに活用できるのが「免除制度」や「納付猶予制度」です。これらの制度を利用すれば、一定期間、保険料の支払いを免除または猶予してもらうことができます。
免除制度とは?
免除制度は、本人や世帯主、配偶者の収入が少なく、年金保険料の支払いが厳しい場合に適用されます。申請が認められると、保険料の一部または全額の支払いが免除されます。
免除の種類は以下の4つです。
- 全額免除:保険料を全額免除
- 4分の3免除:保険料の75%が免除され、残りの25%を支払う
- 半額免除:保険料の50%を免除、残りの50%を支払う
- 4分の1免除:保険料の25%を免除、残りの75%を支払う
免除された期間も年金の受給資格期間としてカウントされるので、支払いが難しいときは早めに申請するのがおすすめです。
納付猶予制度とは?
納付猶予制度は、50歳未満の人が対象で、本人や配偶者の所得が一定以下の場合に、保険料の支払いを一時的に先送りできる制度です。免除とは異なり、後から追納(あと払い)することも可能です。
納付猶予期間中は、年金の受給資格期間にカウントされますが、そのままにしておくと将来の年金額が減ってしまいます。猶予を受けた期間の分を10年以内であれば追納できるので、余裕ができたらできるだけ早めに支払うことが大切です。
免除・猶予制度の申請方法
これらの制度を利用するためには、毎年申請を行う必要があります。申請は、住んでいる地域の市区町村役場や年金事務所で行えます。
申請時に必要なものは以下の通りです。
- 年金手帳または基礎年金番号通知書
- 本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカードなど)
- 所得を証明する書類(必要な場合)
また、免除・猶予が認められた後も、毎年更新手続きをしないと制度が適用されなくなるので注意しましょう。
免除や猶予を受けるとどうなる?
免除や猶予制度を利用すれば、年金保険料の負担を減らすことができますが、デメリットもあります。特に、免除を受けた期間は年金の受給額が減るため、将来の年金額を少しでも増やしたい場合は、追納を検討するとよいでしょう。
経済的に厳しいときに年金保険料の支払いを無理に続けると生活が苦しくなってしまいます。免除・猶予制度をうまく活用しながら、将来の年金を確保する方法を考えていくことが大切です。
免除を受けると将来の年金額はどうなる?
年金の免除制度を利用すると、一時的に保険料の支払い負担を軽減できますが、将来の年金額には影響があります。免除を受けた期間は、年金の受給資格期間としてカウントされるものの、支払った場合と比べると受給額が減る可能性があるため、仕組みをしっかり理解しておくことが大切です。
免除の種類によって受給額が変わる
年金の免除には、「全額免除」「4分の3免除」「半額免除」「4分の1免除」の4種類があります。それぞれ、年金の受給額にどのような影響があるのか見てみましょう。
免除の種類 | 年金の受給額に反映される割合 |
---|---|
全額免除 | 納付した場合の 2分の1 |
4分の3免除 | 納付した場合の 8分の5 |
半額免除 | 納付した場合の 8分の6 |
4分の1免除 | 納付した場合の 8分の7 |
たとえば、40年間(480か月)すべて免除を受けた場合、本来の受給額の半分しかもらえなくなってしまいます。一方で、4分の1免除であれば、ほぼ満額に近い金額を受け取ることができます。
免除期間が長いと年金額が大きく減る
免除の期間が長くなるほど、将来の年金額は少なくなります。例えば、1年間(12か月)全額免除を受けると、年間の年金額が約2万円減ると言われています。
また、年金は一生涯受け取るものなので、たとえば年金を20年間受け取ると考えると、2万円 × 20年 = 40万円も差が出ることになります。免除を利用すれば負担は減りますが、老後の生活資金が減るリスクも考慮しなければなりません。
追納すれば年金額を回復できる
免除を受けた期間の保険料は、10年以内であれば「追納」することが可能です。追納をすることで、将来の年金額を通常の納付と同じ水準まで回復させることができます。
ただし、免除を受けてから3年以上経過すると、加算額が上乗せされてしまい、通常よりも高い金額を支払う必要が出てきます。可能であれば、できるだけ早めに追納したほうが負担を抑えられます。
免除を受けるかどうかの判断ポイント
免除制度は、支払いが厳しいときに助かる制度ですが、将来の年金額に影響するため、以下の点を考慮して利用することが大切です。
- 一時的に免除を受けて、余裕ができたら追納する
- できるだけ「4分の1免除」や「半額免除」で支払う割合を残す
- 老後の生活資金として年金がどれくらい必要か考える
免除を利用すると、確かに負担は減りますが、受給額も減るため「後から追納できるかどうか」を視野に入れて、賢く制度を活用しましょう。
免除・猶予の申請方法
年金の免除・納付猶予制度を利用するためには、毎年申請が必要です。一度申請して認められた場合でも、翌年度には再び申請しないと適用が継続されないため、注意しましょう。申請手続きはシンプルですが、期限を過ぎると未納扱いになってしまう可能性があるため、早めの手続きをおすすめします。
どこで申請できる?
免除や納付猶予の申請は、以下の窓口で受け付けています。
- 住んでいる地域の市区町村役場の国民年金担当窓口
- 最寄りの年金事務所
- 郵送での申請も可能(市区町村役場または年金事務所に確認)
また、日本年金機構の「ねんきんネット」でも申請書のダウンロードができます。
申請に必要なもの
申請時には、以下の書類や情報が必要です。
- 年金手帳または基礎年金番号通知書(基礎年金番号が分かるもの)
- 本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証など)
- 前年の所得を証明する書類(必要な場合)
- 失業した場合は「雇用保険受給資格者証」や「離職票」など
特に、前年の所得によって免除の適用が決まるため、所得証明が必要になる場合が多いです。なお、市区町村が所得情報を把握できる場合は、提出が不要なこともあります。
申請の期限
免除や納付猶予の申請は、原則として申請した月からの適用になります。ただし、最大2年1か月前までさかのぼって申請可能なので、過去に支払いが難しかった期間がある場合は、一度相談してみるのも良いでしょう。
例えば、2025年4月に申請する場合、2023年3月分までさかのぼって申請可能です。ただし、未納期間が長くなると年金の受給額に影響するため、なるべく早めに手続きをすることが大切です。
免除・猶予が認められなかった場合
免除や納付猶予が認められない場合は、分割納付や支払い方法の変更などの対応策もあります。
- 分割納付の相談:一度に支払うのが難しい場合は、少しずつ納める方法も可能
- クレジットカード納付:支払い時期を調整できるため、家計管理がしやすくなる
- 口座振替の設定:未納を防ぐため、口座振替で自動納付を選択するのも一つの方法
また、失業や災害など特別な事情がある場合は、所得基準に関係なく免除が認められることもあります。 状況によって判断が異なるため、年金事務所や市区町村窓口で相談すると良いでしょう。
申請後の確認ポイント
申請後、免除や猶予が認められると、日本年金機構から通知が届きます。その際、免除の種類(全額免除、4分の3免除など)が記載されているので、内容を確認しておきましょう。
また、免除を受けた期間の分は、10年以内であれば「追納」して年金額を増やすことが可能です。将来の年金額を少しでも増やしたい場合は、家計に余裕ができたタイミングで追納を検討するのもおすすめです。
年金の免除・猶予制度を上手に活用することで、支払い負担を軽減しつつ、年金の受給資格を確保することができます。申請は毎年必要なので、忘れずに手続きを行いましょう。
60歳からの年金受給の選択肢

受給資格を満たしているか確認しよう
年金を受給するには、一定の受給資格を満たしているかどうかを確認することが必要です。「60歳になったから自動的に年金がもらえる」と思っていたら、実は資格を満たしていなかった…というケースもあるので、しっかりチェックしましょう。
年金の受給資格とは?
年金を受け取るためには、保険料を一定期間納めていることが条件になります。具体的には、以下の条件を満たしている必要があります。
- 老齢基礎年金(国民年金):10年以上の納付期間があること
- 老齢厚生年金(厚生年金):1カ月以上の厚生年金加入期間があること(ただし、厚生年金部分の受給には、老齢基礎年金の受給資格を満たしていることが前提)
国民年金は最低でも10年間納付していないと受給できません。以前は25年必要でしたが、2017年の制度改正で10年に短縮されました。ただし、未納期間が長いと、受給資格はあっても年金額が少なくなるので注意が必要です。
自分の納付記録を確認する方法
受給資格を満たしているかどうかは、年金保険料の納付記録をチェックすることで確認できます。
以下の方法で、自分の納付状況を確かめてみましょう。
- 「ねんきん定期便」を確認する:毎年誕生月に送られてくる通知で、納付月数や見込み年金額が分かる
- 「ねんきんネット」を利用する:日本年金機構のオンラインサービスで、最新の納付状況をいつでもチェックできる
- 年金事務所や街角の年金相談センターで相談する:対面で詳しく教えてもらえる
特に、過去に転職や自営業への転換、海外移住などがあった人は、納付漏れがないか確認することが大切です。
受給資格が足りない場合の対処法
もし「受給資格を満たしていない」と判明した場合、以下の方法で資格を得ることができます。
- 任意加入する(60歳以降も国民年金保険料を支払って受給資格を満たす)
- 過去の未納分を追納する(未納期間が2年以内なら追納可能)
- 合算対象期間を活用する(海外在住期間などをカウントできる場合がある)
特に、60歳時点で納付期間が10年に満たない場合は、65歳まで任意加入することで受給資格を獲得できるため、早めに年金事務所に相談するのがおすすめです。
年金は長期にわたって受給する大切な収入源なので、「もらえるはずだったのに受給資格が足りなかった…」とならないよう、事前にしっかり確認しておきましょう。
繰上げ受給と繰下げ受給の違い
年金の受給開始時期は60歳から75歳の間で自由に選ぶことができます。 その中でも、「繰上げ受給」と「繰下げ受給」は、受給開始のタイミングを早めるか遅らせるかによって、もらえる年金額が変わる重要な制度です。それぞれの違いをしっかり理解して、自分に合った選択をしましょう。
繰上げ受給とは?
繰上げ受給は、通常65歳から受け取る年金を60歳から64歳の間に早めて受給開始する制度です。ただし、年金を早くもらえる分、毎月の受給額は減額されるので注意が必要です。
減額率は1カ月あたり0.4%で、例えば60歳で繰り上げると、65歳受給と比べて24%減額されます。一度繰り上げると、その後に年金額を元に戻すことはできません。
【繰上げ受給の特徴】
- 60歳から受給可能(最大5年早められる)
- 毎月の年金額が減る(0.4%×繰上げた月数)
- 一度繰上げると、減額率は一生固定される
繰上げ受給は、「今すぐにでも年金を受け取る必要がある人」や「老後の収入源を早めに確保したい人」に向いています。
繰下げ受給とは?
繰下げ受給は、65歳からもらえる年金を66歳から75歳まで遅らせて受給開始する制度です。繰り下げることで受給額が増えるため、長生きするほどお得になる仕組みです。
**増額率は1カ月あたり0.7%**で、例えば70歳まで繰り下げると、65歳受給と比べて42%増額されます。75歳まで繰り下げると、最大84%の増額が可能です。
【繰下げ受給の特徴】
- 66歳~75歳の間で受給開始を遅らせられる
- 毎月の年金額が増える(0.7%×繰下げた月数)
- 増額した年金額は一生涯続く
繰下げ受給は、「できるだけ多くの年金をもらいたい人」や「他の収入源があり、65歳時点で年金が必要ない人」に向いています。
繰上げと繰下げ、どちらが得?
繰上げ受給と繰下げ受給のどちらを選ぶべきかは、自身の健康状態や生活状況によって変わります。 繰上げは早く受け取れる分、受給額が減りますが、繰下げは長生きすればするほどお得になります。
一般的に、「80歳より長生きする場合は繰下げ受給が有利」と言われていますが、将来の健康状態や働き方を考慮して、自分に合った受給開始時期を選ぶことが大切です。
どのタイミングで受け取るのが得?
年金を受け取るタイミングは、早くもらう(繰上げ受給)か、遅くもらう(繰下げ受給)かによって、総受給額や生活設計に大きく影響します。 では、どのタイミングで受け取るのが得なのでしょうか?それぞれのケースを比較しながら、自分に合った選択を考えてみましょう。
繰上げ受給が向いている人
繰上げ受給(60歳~64歳で受給開始)は、できるだけ早く年金を受け取りたい人に向いています。
【繰上げ受給を選ぶメリット】
- 60歳から年金を受け取れるため、早めに生活資金を確保できる
- 退職後の収入がなくなり、生活費の補填が必要な人に便利
- 健康状態が不安で、長生きできるか分からない人に有利
【繰上げ受給の注意点】
- 毎月の年金額が最大24%減額され、一生その金額が続く
- 65歳から受けられる加給年金(配偶者の年金上乗せ)がなくなる
- 在職中に繰上げ受給すると、在職老齢年金のルールで年金が減額される可能性がある
特に、「貯蓄が少なく、60歳からの生活費が不安」という人は、繰上げ受給で早めに資金を確保するのも選択肢の一つです。
繰下げ受給が向いている人
繰下げ受給(66歳~75歳で受給開始)は、できるだけ多くの年金を受け取りたい人に向いています。
【繰下げ受給を選ぶメリット】
- 1カ月遅らせるごとに0.7%増額、最大で84%増額される
- 長生きすればするほど総受給額が増える
- 他に収入(仕事や貯蓄)があり、65歳時点で年金が必要ない人に有利
【繰下げ受給の注意点】
- 75歳まで遅らせると、その間の生活費を別で確保する必要がある
- 早く亡くなってしまうと、結果的に総受給額が少なくなる可能性がある
- 65歳以降の健康状態によっては、年金を使う機会が減るかもしれない
特に、「まだ働いていて収入がある」「貯蓄に余裕がある」という人は、年金の繰下げ受給で受給額を増やすのが賢い選択になりやすいです。
どの年齢で受け取るのがベスト?
年金は「長生きするほど繰下げが有利、早く亡くなるほど繰上げが有利」と言われます。
- 80歳前後までの総受給額を重視するなら → 早めに繰上げ受給が有利
- 80歳以上まで長生きする可能性があるなら → 繰下げ受給が有利
例えば、70歳まで繰下げ受給すると、約42%年金額が増えるため、80歳以上まで生きれば繰下げの方が総受給額が多くなります。一方で、短期間で多く受け取りたいなら、繰上げ受給を選ぶのも一つの方法です。
生活スタイルに合わせた受給タイミングを考えよう
「年金をいつ受け取るか」は、収入・貯蓄・健康状態・ライフプランによって大きく変わります。仕事を続ける予定があるか、貯蓄で生活費を補えるかなどを考えながら、自分にとって最適なタイミングを選びましょう。
自分に合った年金の選び方

どんな人が年金保険料を払うべき?
年金保険料の支払いは、将来の生活を支える大切な仕組みですが、「今の負担が大きい」「本当に払うべきなのか?」と悩む人も多いですよね。では、どんな人が年金保険料を払い続けるべきなのでしょうか? 自分の状況と照らし合わせながら、考えてみましょう。
受給資格を満たしていない人
年金を払うべきかどうかを判断するうえで、まず確認すべきなのが「受給資格を満たしているかどうか」です。
老齢基礎年金(国民年金)を受け取るには、最低10年間(120か月)の保険料納付が必要です。これを満たしていないと、将来、年金をまったく受け取れなくなってしまうため、未納期間がある人や納付期間が短い人は、受給資格を確保するために60歳以降も任意加入して支払うべきケースがあります。
「あと数年払えば受給資格を満たせる」という場合は、任意加入制度を利用して支払うことを検討するのがおすすめです。
将来の年金額を増やしたい人
年金の受給額は、支払った期間に応じて決まるため、「老後の年金額を少しでも増やしたい」という人は、年金保険料をしっかり払い続ける方が有利になります。
特に、国民年金を40年(480か月)納めた場合、満額(2024年度で約81万6,000円/年)を受給できますが、未納期間があるとその分減額されます。
「将来の生活費が心配」「老後の貯蓄が少ない」という人は、未納期間を作らず、満額に近づけるように支払う方が安心です。
厚生年金に加入している会社員や公務員
会社員や公務員として働いている人は、厚生年金に加入している限り、年金保険料を払い続けることになります。
厚生年金は国民年金と違い、給与に応じて支払う仕組みになっており、支払った分だけ将来受け取る年金額も増えます。特に、厚生年金の加入期間が20年以上あると、「加給年金」などの優遇措置があるため、長く働くほど年金額が増えるメリットがあります。
60歳以降も働き続ける場合は、厚生年金保険料を払い続けることで将来の受給額がアップするため、長期的に見れば支払うメリットが大きいと言えます。
遺族年金や障害年金の保障を受けたい人
年金には、老後に受け取る「老齢年金」だけでなく、「遺族年金」や「障害年金」といった保障制度もあります。
- 遺族年金:被保険者が亡くなった場合、家族(配偶者・子どもなど)が受け取れる年金
- 障害年金:病気やケガで障害を負った場合に支給される年金
年金の未納期間が長いと、これらの年金を受け取る資格を失ってしまう可能性があります。特に、家族を養っている人や、自分が万が一のときの備えをしておきたい人は、年金保険料を払い続けたほうが安心です。
生活に余裕がある人
年金は長生きすればするほど受給総額が多くなり、老後の安定した収入源になります。そのため、「貯蓄に余裕があり、現役時代にしっかり年金保険料を納めておきたい人」は、未納や免除をせずに払う方が有利です。
特に、繰下げ受給(65歳以降に受給開始を遅らせる制度)と組み合わせると、年金額を大幅に増やせるため、貯蓄に余裕のある人は、支払いを継続しつつ受給開始を遅らせることで、さらにメリットを享受できます。
年金を支払うことで得られるものを考えよう
年金は、単なる支出ではなく、将来の生活を支える大切な資産です。特に、「受給資格を満たしていない人」「年金額を増やしたい人」「遺族年金や障害年金の保障を受けたい人」などは、年金を払い続けることで大きなメリットを得られます。
自分の将来の生活を考えたときに、どれくらい年金が必要かをシミュレーションしながら、支払いを続けるかどうかを判断することが大切です。
どんな人が免除を選ぶべき?
年金保険料の支払いが厳しいと感じたときに利用できるのが、「免除制度」です。しかし、免除を受けると将来の年金額が減るため、「本当に免除を選ぶべきか?」を慎重に判断することが大切です。では、どんな人が免除を選ぶべきなのか、具体的に見ていきましょう。
一時的に収入が減って支払いが難しい人
免除制度は、経済的な理由で年金保険料の支払いが難しい人向けの制度です。特に、以下のような状況にある人は、免除を検討するべきケースに該当します。
- 失業中で収入がない
- フリーランスや自営業で収入が大きく減少した
- 病気やケガで働けなくなった
これらの状況にある人は、無理に年金保険料を支払おうとして生活が厳しくなるよりも、免除を活用して負担を軽減するほうが賢い選択です。
受給資格を満たしていないが、支払いが厳しい人
老齢基礎年金(国民年金)は、最低10年間(120か月)納めないと受給資格を得られません。 もし、60歳時点で10年に満たない場合、そのままにしておくと将来的に年金を受け取ることができなくなってしまいます。
ただし、経済的に厳しくて納付が難しい場合は、免除を利用することで「受給資格期間」としてカウントされるため、年金の受給権を確保できます。 免除を選んでも受給額は減りますが、まったく未納のまま放置するよりは、免除を受けて資格期間を確保する方がはるかに有利です。
老後の貯蓄や収入が十分にある人
すでに老後の貯蓄が十分にある人や、他に安定した収入がある人は、無理に年金保険料を納めなくても生活に困らない可能性があります。 その場合は、免除を受けて支出を減らし、別の資産運用や投資に回すのも一つの選択肢です。
ただし、年金は長生きするほど総受給額が増える「長寿リスク対策」として有効な制度です。免除を選ぶことで、将来の年金額が減るリスクがあるため、貯蓄だけで本当に老後を賄えるのかを慎重に判断する必要があります。
生活保護の可能性がある人
将来的に生活保護を受ける可能性がある人は、無理に年金保険料を支払わなくてもよいケースがあります。 生活保護を受けると、国から最低限の生活費が支給されるため、年金を受け取らなくても生活が保障されることになります。
ただし、年金を受給できる場合は、生活保護費の一部として計算されるため、「年金をもらっているから生活保護を受けられない」というわけではありません。将来の生活設計を考え、免除を活用するかどうかを検討することが重要です。
免除を選ぶ際のポイント
免除を受けると、その期間は年金額に反映される割合が低くなりますが、10年以内であれば「追納」することで将来の年金額を回復することができます。
- 一時的に支払いが厳しい人は、免除を利用して後から追納を検討するのがおすすめ。
- 受給資格を確保するために免除を選ぶのは、未納よりも有利。
- 老後の収入に余裕がある人は、免除を選んで支出を抑えるのも一つの方法。
免除を利用すると年金額が減るデメリットはありますが、まったく未納のままにしてしまうよりは、受給資格を確保できるメリットがあります。自分の状況に合わせて、最適な選択をすることが大切です。
相談できる窓口を活用しよう
年金の仕組みは複雑で、「いつから受け取るのがいいのか?」「免除を申請すべきか?」など、悩むことも多いですよね。そんなときは、専門の窓口で相談するのがおすすめです。公的機関の窓口を利用すれば、無料で正確な情報を得られるため、年金に関する疑問をスムーズに解決できます。
年金相談ができる主な窓口
年金に関する相談ができる窓口はいくつかあります。自分の状況や相談内容に応じて、適切な窓口を選びましょう。
- 年金事務所(日本年金機構)
- 全国の年金事務所で、年金保険料の納付状況や受給額の試算、免除の申請方法などを相談できる。
- 予約をすると待ち時間が短縮できるため、事前に日本年金機構の公式サイトから予約するのがおすすめ。
- 【相談できる内容】
- 年金の受給開始時期のシミュレーション
- 免除や猶予の手続き
- 年金保険料の納付状況の確認
- 街角の年金相談センター
- 日本年金機構が運営する相談窓口で、全国の主要都市に設置されている。
- 年金事務所と同様の相談が可能で、土日対応の窓口もあるため、平日に時間が取れない人に便利。
- 【相談できる内容】
- 年金の支給開始時期のアドバイス
- 加給年金や繰下げ受給の相談
- 将来の年金額の見込み試算
- ねんきんダイヤル(電話相談)
- 日本年金機構が提供する電話相談サービスで、自宅から手軽に相談できる。
- 窓口に行く時間がない人や、簡単な質問をしたい人におすすめ。
- 【相談できる内容】
- 年金の仕組みについての質問
- 受給資格の確認
- 必要な手続きの案内
- ねんきんネット(オンラインサービス)
- 日本年金機構が提供するウェブサービスで、自分の年金記録を確認できる。
- 受給見込み額を試算できるため、「年金事務所に行かなくてもある程度の情報を知りたい」という人に便利。
- 【利用できる機能】
- 年金の納付履歴の確認
- 受給額のシミュレーション
- 各種手続きの案内
窓口を活用するメリット
年金の相談窓口を利用すると、自分にとって最適な選択を具体的にアドバイスしてもらえるため、不安を解消しやすくなります。また、窓口によっては予約が可能で、スムーズに相談できる点も魅力です。
特に、「繰上げ・繰下げ受給のどちらがいいか」「免除を受けると将来どうなるか」などは、専門家のアドバイスを受けることで、より納得のいく決断ができるでしょう。
相談する際のポイント
窓口で相談する際は、あらかじめ聞きたいことを整理しておくとスムーズです。具体的には、以下のような情報を事前に用意しておくと、より的確なアドバイスを受けやすくなります。
- 年金手帳や基礎年金番号が分かるもの
- 過去のねんきん定期便(年金の納付状況が記載されている)
- 現在の収入状況や今後の働き方の予定
年金は長い将来にわたって関わるものだからこそ、不安や疑問がある場合は、専門の窓口を活用して最適な選択をしましょう。
まとめ:年金保険料の支払いは自分に合った選択を

記事のポイント
- 60歳で年金保険料の支払いが終わるかどうかは、加入している年金の種類による
- 国民年金は原則60歳で支払い終了するが、未納期間がある場合は任意加入が可能
- 厚生年金は70歳未満の会社員に加入義務があり、60歳以降も働けば支払いが続く
- パートやアルバイトでも一定の条件を満たせば厚生年金に加入する必要がある
- 60歳以降に国民年金へ任意加入すると、受給資格を満たしたり受給額を増やせる
- 70歳まで国民年金の任意加入が可能なのは昭和40年4月1日以前生まれの人のみ
- 繰上げ受給を選ぶと早く年金をもらえるが、受給額が減る
- 繰下げ受給を選ぶと受給額が増えるが、開始時期を遅らせる必要がある
- 年金の免除制度を活用すると支払い負担を軽減できるが、受給額が減る可能性がある
- 受給資格や納付状況を確認するために「ねんきんネット」や年金事務所を活用するとよい
総括
「60歳になったら年金保険料は払わなくていいの?」と疑問に思う方も多いですが、実際は加入している年金制度や働き方によって異なります。国民年金は原則60歳で支払いが終了しますが、未納期間がある場合は任意加入を選択できます。一方、厚生年金は70歳未満の会社員に加入義務があり、60歳を過ぎても働き続ける場合は支払いが続きます。
また、60歳以降の年金受給には選択肢があり、繰上げ受給をすれば早く年金を受け取れますが、受給額が減少します。逆に繰下げ受給を選べば受給額が増えますが、受け取り開始が遅くなります。どちらが最適かは、今後の生活設計によって変わるため、しっかりと検討することが大切です。
年金保険料の支払いが厳しい場合は、免除制度や猶予制度を活用する方法もあります。ただし、免除期間が長いと将来の年金額が減るため、できるだけ追納を検討しましょう。
年金保険料の支払いが60歳で終わるかどうかは人それぞれ異なります。自分の状況をよく確認し、将来の生活に備えた適切な選択をしましょう。